MAIL

Vol.94 『Trekking to Dhampus』
 2003年5月2日

『ネパールのMAILは俺が書く!』
そう宣言していながら、その舌の根も乾かぬうちにすでに燃え尽きたかのごとく
断筆宣言をしたアキヤン。なんというあきらめの早さであろう。

しかも誕生日を迎えた自分の歳すら間違えてる始末。
(これがHPに登場する頃にはすでに書き換えられていると思うが、
 Vol.93 にある年齢は本当は43歳ではなく42歳なのだ!)
しかし、自分の歳もわからなくなるほど気を抜いて生きている奴も珍しい。
まぁ、それはそれで幸せな人生とも言えるのかもしれない。

ということで再び私が書く事になり、急にバタバタしているところである。
Pokhara(ポカラ)に着いて早々、風邪をうつされダウン。
それでも、滞在先の「Mam's Garden Resort(マムズ・ガーデン・リゾート)」
最高に快適だったので救われた。オーナーの宮本さんの蔵書を借りまくり、
ぼーっとしながらも、朝から晩まで読書三昧の幸せな日々を送らせてもらった。

部屋からはポカラのシンボルであるマチャプチャレ(6993m)が見える。
布団に包まり、夢枕獏の「神々の山嶺」を読みながら、気分だけトレッキング。
ネパールの本屋にある日本語の本も、やはり、というか当然ながら『山』関係の本が多く、
体が治ったらちょっと『山』を覗いてみたいという気持ちが徐々に高まる。

活字中毒もすっかり解消し、体力も戻ってきたある日のこと。
遂に妹のNOBUが登場した!!
NOBUちゃん
運び屋NOBUちゃん。

かねてから、『いつか遊びに行くよ』
と言い続けていた彼女。
日本から我々が頼んだ山のような荷物を
持ってネパールにやって来た。
しかも3日前に入籍を済ませたばかりなのに
旦那を置きざりにしての登場だぁ!
(いいのかそれで!?)

Kathmandu(カトマンドゥ)で1泊して
そのままポカラに来るはずが、
天候不順により飛行機が欠航。(ポカラの空港の滑走路には電気がない!)
泣く泣く足止めをくらいもう1泊して、翌朝の便でようやく到着したのだ。
久しぶりの再会に、話は大いに盛り上がる。

なんたってNOBUは動物占いでいうところのチータで
『流行りモンならコイツに聞け!』 的存在なので、日本の近況を聞くには最適任者。
取り残されていた日本の情報がダイジェスト版になって一気になだれこみ、
再会初日は、あっという間に脳ミソ飽和状態となってしまったのであった(笑)。

街を探索したり、湖でボートに乗ったりと数日のんびりした後、やはりここは
『山』に少しでも触れようではないか!と、3人でトレッキングに出かけることにした。

目指すはアンナプルナのベース・キャンプ!!

Phedi
Phedi。右の石の階段を登る。
と言いたいとこだが、『山=辛い』という
方程式が頭に沁みこんでいる根性無しの
我々にとって、そこはあまりにも遠かった。
変わりに気軽に行ける近場の村、
Dhampus(ダンプス)まで1泊2日の
ミニトレッキングと決め込む。
まずは出発地点の村Phedi(フェディ)
まで車で向かい、そこから登り始める。
雲ひとつない晴天。
最高のトレッキング日和である。

Trekking(トレッキング)という言葉が広がったのはネパールからだと言う。
厳密に言うと、6000m以上のピークを征服することを「登山」、
それ以下の山々を歩くのを「トレッキング」と言うらしい。

だから一まとめに「トレッキング」と言っても、それこそピンからキリまで。
場所によっては許可証が必要な所もあるし、それなりの準備が必要なものもある。
勿論、我々の向かったDhampusはそんなもんは必要ない。
2時間余り(?)の道程をのんびり休み休み行こう!という“お気楽トレッキング”なのだ。
だから荷物も最低限必要な物だけである。

最初はちょっと急な上り坂。
旨いこと石が組み合わされた階段を登っていく。
20分も上り続けると息が切れてきた。病み上がりで体力がかなり落ちている。
情けない…。「ちょっと、休憩しない?」と早速、休憩。
休んでいるうちに、後続のトレッキング・グループにドンドン抜かれる。
我々のように軽装の人から、どう見ても本気の人まで、様々な人々がいて面白い。

そのうち下方からこんな人達が登ってきた…。
荷物運び
荷物運び部隊登場!
コカ・コーラ
なんと籠の中はコカ・コーラが一杯。
ひぇ〜!一体これを運んでいくら稼げるのだろう?

籠の中に目一杯コーラを積んだ団体が我々を追い越していく。
しかも足元はゴムぞうりである!
「おお〜っ、凄い…。」

思えばネパールでは、この『担ぐ人』というのを、実に良く見かけるのであった。
それは町中でも田舎でも同じこと。運んでいるのも様々で、田舎は薪とか枯葉が多く、
町中はタンスだったり米俵だったりといろいろあるのだが、どちらにせよ、
尋常じゃない量と重さであることは間違いない。
小さい子供から女性まで、『担ぐ人』を見ない日は無いといってもいいくらいだ。

ヒマラヤの麓の大地の起状に沿って生きる人々にとって、山の登り降りは
日常のこと。厳しい自然の中で生活する為の必然というのもあるのだろうが、
その基礎体力(あるいは忍耐力?)の差は歴然である。
この国で生まれ育った人々が、世界で最強の傭兵との誉れも高いグルカ兵に
なるという事実も納得できるというものだ。

“コーラを担いで登る人々”を見て、思わず
「私達は甘かった」 「こんなとこで休んでてスイマセン」 と言いたくなる。
その後、我々もアップラインに続け! とばかりに、立ち上がって登り始めた。

茶屋
最初の茶屋。ここから見える景色は
パノラマ・ビューで最高だ。
休憩
ちょいと一休み。現地の子供達と触れ合う。
しかし、この子達凄いとこに座ってる。
柵なんか無いよ〜!

最初の急な登り坂を登りきった所には茶屋が1軒。
品揃えは薄いが、それらがここまでどうやって運ばれて来たかと考えたら、
ぬるいコーラですらありがたかった。

最初の坂を上りきったらしばらく平らな道を歩く。
両脇にはパノラマ・ビューのライステラスが見えてくる。
ネパールはやはり大陸、視界に入る空間はもの凄く広い。

高度4000メートルまでは米をつくることが出来るらしく、
道
道。
高い山肌に沿ってライステラスが
果てしなく続いている。

両側に広がる田園をみながら歩く。
かってどこかで見たような?
それでいてよくよく考えると
どこでも見てないといった景色が
広がっている。やはりここはアジア。
どこか子供の頃の原体験に
コネクトする風景なのかもしれない。

石の目印

Dhampusに向かう目印。石や壁に書いてある。
迷いそうなところには石に矢印が…。
道
途中、民家の間を通り抜けるのも楽しい。

雄大な自然、山肌に広がるライステラス、そこを飛び交う蝶々達。
周りに遮るものがないせいか、鳥の声も思いのほか辺りに響き渡る。
美しい景色の中を、きれいな空気を思いっきり吸いながら歩いていく。
結構、気持ちいい。

女の子
かわいい村の女の子。
男の子
やんちゃ坊主の2人組み。

トレッキングをしていると、色んな人や動物、景色に出会う。
途中、村の中を通り過ぎたりする時など、そこで普通に暮らしている人々の生活を、
一瞬垣間見れたりして楽しいものだ。
農作業をする女の人達。近所の人と四方山話をしているおじいちゃん達。
赤ん坊をあやすお母さん… etc。

中でも、村の子供は恐ろしく泥だらけで汚いが、もの凄く可愛い。
目が会うと、人懐っこい笑顔で必ず「ナマステー」と挨拶をしてくれる。

基本的に大家族制で暮らしている国なので、子供と言えども立派な労力らしく、
小さな子供でも水を運んだり家の手伝いをする姿を良く見かける。
3歳くらいにしか見えない子供が、平気で赤ちゃんを抱いてあやしている姿を
見ると驚いてしまう。(ちょっと日本では考えられないことだ。)

ここには当然、テレビもないし、ゲームセンターもない。
それどころか、滑り台やブランコすらみかけない。
しかし、子供達のキラキラした目をみていると、
物に溢れた都会の子供とどちらがいいのか、つい考えさせられる。

途中休みながら、歩くこと約3時間 いきなり目の前に『山』が現れた。

景色
坂を上りきった瞬間に山が見えた!
マチャプチャレ
マチャプチャレ。 圧巻!!

「うわぁ〜!!」 思わず声がでる。 美しい!!
ポカラで見るよりもずっと真近にマチャプチャレをはじめとするアンナプルナ連峰が
正面に広がっている。『山』にまったく興味がなかった我々でさえ、
その神々しい姿を見て、素直に感動した。

思ったよりあっけなく到着したDhampusの村は、1kmくらい範囲で広がる小さな
村だった。数軒の宿を見て周り、景色のいい
宿
宿。簡素だが快適。
ヒマラヤを眺めながら、お土産の本を読む。
1軒の宿にチェック・インする。

目の前にはヒマラヤ。
雲ひとつない空。
アンナプルナ連峰の美しい山々を
眺めながらリラックス…。
いつもは午後になると雲で隠れる山々も、
この日は1日中顔を見せていて、
現地の人にも、「君達はラッキーだ」と
言われる。

気が向いたら近所の茶屋でお茶を飲んだり、現地の人と触れ合ったりして、の〜んびり。
夜になると真っ暗になるし、部屋のシャワーのお湯が出なかったりと多少のトラブルは
あっても、大自然の中なら、“それもしかたがないさ”と文句も出ない。
それよりも、こんな山の中でちゃんと泊まれてご飯も食べれる事自体に
感謝の心さえ芽生えてくる。

翌朝、起きて部屋のドアを開けると、またしても空は晴れ渡っていた。
ネパール・ティーを飲みながら、天空に突き刺さるようなマチャプチャレの姿を
しばし眺める。『山』を愛する人々の気持ちが、ちょっとわかったような気がした。

午後の陽射しを避けて、早目に下山する。
下りの景色も、登りとはまた一味違って美しい。
「こんなに面白いなら、もっと長く何日もかけて上まで行ってもよかったね。」
などと言いながら楽しくトレッキングを満喫した我々であったが、
そこはやはり我ら軟弱3人組のことである。

下山した次の日、早速、全員筋肉痛に襲われて、
「やはりあれくらいで止めておいてよかった。」 と話が合うのが、
情けなくもおかしかった。

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